L’OFFICIEL COFFEE
Site: 東京
Architect: 芦沢啓治建築設計事務所
Project architect: 芦沢啓治 / 丸山良太
施工: 株式会社ライフワン
家具:ARIAKE、秋田木工、カリモク家具
照明計画: AURORA Inc. / 市川善幾
Photo: 見学友宙
表参道のメインストリートから1本入った通りに、1921年フランス・パリで創刊しファッション、アート、カルチャーを100年以上にわたり発信しているロフィシェルが初めて手がけるコーヒーショップである。
3階建て一棟の建物全体には、ロフィシェルの世界観を体現することが求められた。2000年初頭に建てられたテナントビルであるが、コストや工事期間のことを考えると建築のストラクチャーや、サッシ周りを活かすことが最善であり、時代的にも必要なことと考えた。よって既存の状況をできるだけ生かしながらも異なる3つのフロアをデザインしていくことになった。同時に雑誌創刊当時には全盛であったアール・ヌーヴォーを参照することにより、雑誌のヘリテージを形にする作業と、東京の表参道という最も東京でHIPな街から始まるL’OFFICIEL COFFEEをモダンなデザインとして紡ぎ出すことになった。
ドリンクをサーブする1Fの入り口は表情豊かな大理石のカウンターがゲストをお迎えし、フレンチヘリーボーンの床と合わせてクラッシックなエレメントを使いながらも金物によって作られたアーチの連続するバックカウンターを組み合わせ、モダンとクラッシックが交わるエントランスとしてる。カウンター向かいにはコーヒーを淹れる様子をゆったりとした気持ちで待てるように、国産本革を使用したベンチソファをカリモク家具にて特注製作している。壁のニッチの奥はミラーにすることで狭い空間に奥行を感じられるようにした。階段の手摺りのデザインや、踏み板の大理石など、ややクラシカルなディテールをシャープに作ること、そしてそれらを丁寧に重ねてモダンな空間の質を作ることを継承している。
2Fはロフィシェルの歴史を表現するアートウォールを、壁にはライブラリー的な機能として貴重なアーカイブの雑誌が並ぶ。ブックシェルフのデザインも1Fからのアーチのモチーフを踏襲し、1階と2階の空間に繋がりを持たせている。3Fはミュージアムのような古い雑誌のアートワークとバーカウンターを設え、夜になると間接照明で昼間とは違った雰囲気を演出する。ARIAKEのバーカウンターチェアや秋田木工のテーブル椅子やスツールなどすべて日本のブランドから家具を採用することで、L’OFFICIEL COFFEEとしてのローカルを大事にするメッセージを作り出している。
外からは全面ガラスでショーケースのように中が見えるため、階段の手摺りの見え方や各階の照明計画も配慮している。エクステリアはフレンチガーデンを意識した植栽と、入口横にはくつろげるテラスを新たに配置した。裏通りではあるが緑に囲まれたこの一角が、ファッションとコーヒーカルチャーを融合する新しいスポットとして、表参道を散策するみなさんに親しまれる場所になればと思う。