9 hours office
Site: 東京
Architect: 芦沢啓治建築設計事務所
Project architect: 芦沢啓治 / 陳子燕 / 南あさぎ
施工: ジーク株式会社
家具:カリモク家具 / KOKUYO / ITOKI
照明計画:AURORA Inc. / 市川善幾
サイン計画:廣村デザイン事務所
Photo: 見学友宙
都市生活に寄り添う宿泊機能を持ち、新しい滞在価値を提案するカプセルホテルブランド「9hours」。その運営本部の移転に伴い、新たなオフィスの内装設計を担当した。
私たちは2018年に9hoursの前オフィスを設計し、これまで複数のホテルプロジェクトにも携わってきた。「1時間(汗を流す)+7時間(眠る)+1時間(身支度)」という、9hoursの最もシンプルな宿泊の概念を、ホテルだけでなく、ブランドを支えるオフィスにも反映させている。
今回の新オフィスは、コロナ禍を経て再び事業が拡大する中での再設計となった。前オフィスの思想を受け継ぎながらも、より洗練され、変化に柔軟に応える拡張性が求められた。
四方に大きな窓を持つ明るい空間を活かし、中心に倉庫や機械室などのサービススペースを集約。その周囲に執務エリアや会議室を配置し、開放感と眺望を最大限に引き出した。窓辺には外を望むカウンター席や、自然光のもとで打ち合わせができるテーブル席を設け、働く人々の日常に“余白”をもたらしている。また、中央のサービスコアが社員エリアと来客エリアをゆるやかに分ける役割を担っている。
執務エリアにはオーク材の壁面収納を設け、木の質感が空間に温かみと落ち着きを与える。
明るいトーンの木は快活さや軽やかさを生み、会議室ではトーンを落として集中に適した空間とした。光と素材のコントラストが、それぞれの空間に深みを与えている。
前オフィスから受け継いだ金物や特注家具のディテールは、新しい空間にも引き継がれ、スケールアップした環境の中でも9hoursらしさを感じさせる。天井の一部をあえて仕上げず、建物の素地を見せることで、素材のラフさと上質さが共存する独特のバランスを生み出している。
オフィスでありながらブランドの世界観を体現するこの空間が、働く人にとって心地よく、訪れる人にとって9hoursの理念を感じられる場所であり続けることを願っている。