9h ninehours Kamata

2018

都内に7つのホテルをオープンさせているナインアワーズ だが、当然のことながら場所によって顧客層、そして利用シーンは異なっている。蒲田は繁華街であると同時に、実は羽田空港へのアクセスが良くビジネス客と観光客双方を取り込める場所である。昨今羽田は国内線のみならず国際線も充実しており、早朝便の前泊需要や深夜便での宿泊も想定された。

すでにナインアワーズ における世界観は完成されているように見えるが、デザインチームから私たちに期待されたことは、よりその世界観のボーダーを拡げていくこと、そして快適さへの追求であった。またトランジットというコンセプトをより強化していきたいという話もあった。それは、短い時間であっても都市に必要なサービスとして、ナインアワーズを使ってもらえるようにするということだ。

このような条件下ではあったが、狭小敷地に11階建の建築を建てることは地盤の悪さもあり、コストの面では中々厳しいものがあり、プランニングもパズルを解くように、ユニットや水回りのプランの検討を重ねた。同時に建築として蒲田の雑駁な街並みに、ナインアワーズの潔い美しさをいかに表現すべきか、凛とした立ち姿こそがナインアワーズであるというようなファサードになるように、避難のバルコニーと階段を利用し軽やかさとドナルドジャッドの彫刻のような連続する美しさを表現している。

インテリアにおいては、既存のナインアワーズを研究しつつ、細かなライティングやマテリアルの検討を行い、コンパクトながらも快適さを作り出すことに注力した。具体的には就寝前という状況を踏まえグレアを徹底的にカットすること、マテリアルにはモノトーンながら手触りを感じられるものを多用した。また、旅立ち前のビジネス客、旅行客にプライベートな仕事場であるデスクスペースをエントランスフロアーに展開した。このスペースはナインアワーズの未来的なカプセル空間と呼応していると同時に、エントランス階に作ることでデスクのみ貸し出しするトランジットサービスを試みている。