Karimoku Commons Tokyo

2020

都心にありながら、閑静な住宅街にある築37年の3階建てのビルをリノベーションしたKarimoku Commons Tokyo。オフィスやギャラリーなどの機能を備えた、幅広い活動を目的としたハイブリッドなスペースである。カリモク家具のコレクションを体験してもらうことだけではなく、展示を通してカリモクの新しい活動に触れることや、異業種のイベントなどと併せてコミュニケーションの場となることを目的としている。

東側の細い前面道路に接した1階はエントリースペースであり、コンクリート造である。2階、3階は鉄骨でできている。住宅地にあることから近隣の建物は低く東面に向いたファサードからはしっかりとした日差しや、東京らしいユニークな景色が入ってくることがとても印象的であった。また階によって光量が大きく異なり、ガラッと印象が変わることをどのように空間的に表現すべきなのかは我々の課題となった。同時に、ギャラリーというパブリックなスペースを抱え込みながらも、カリモクのスペースであることをささやかに表現したいと思った。単なるホワイトスペースとせずに、壁面を覆った凛とした本棚や、壁面収納の扉はカリモク製である。2階、3階に配置される4つのコレクションの家具の特徴から、各階での仕上げや色を微妙に調整している。色に関しては光の具合がかなり違うことから、現地で決定している。リノベーションとはいえ既存の騒がしいデティールを消去させ、全体としてノイズを減らしていくとともに、リノベーションとしての豊かなデザインとしてバランス良く既存のデティールを残していくことを、現場での試行錯誤を繰り返した。

ショールームであるが故に、コレクションは変化をし続ける。そういった自由度のある空間は必要であるが、家具がセッティングされスタイリストの中田由美さんによるスタイリングが入ったことで、生活が浮き上がってきた。また今回は設計のみならず、ギャラリー部分などの運営にも関わらせてもらっている。オープンしてやく一月がたち、私自身も空間を体験し、また空間と家具の説明を行なってきた。家具のショールームとして空間の重要性、そして1階と屋上のスペースがコレクションを見せるスペースと同じくらいに重要であることを感じている。また東京におけるデザインシーンにおいても大事なスペースとして育ってくれることを願っている。