11 Boxes

2002

敷地は工業地域にあり、私道を挟み込んだミニ開発の一部である。施主の夫婦は住宅専門誌を通読する建築通であり、土地の取得にあたって容積率や建坪率の検討をし、自分たちの生活像を描いていた。多趣味な彼らにとってこの住宅は、生活を楽しむための装置だという思い切りの良さがあった。そのため、建築がかなりのローコストとなっても使いこなせるだろうという共通認識があった。そこでプレファブ的なつくり方をすることでコストを下げるとともに、匿名性の強い空間をつくることにした。そうすることで 、生活を思い描きやすいのではないかと思ったからだ。

まず一般的なトラックで運べる最大のフレームを調べ、プランのなかで構造と機能の整合性を探した。階段が入るユニットを1.75m、ベッドルーム、リビングエリアを2.55m、そして水回りとオフィススペースを2.2m として、11 個のボックスを組み上げている。1 階部分だけ箱は2 つとなっており、キャンチレバーのボリュームによって屋根付きの駐車スペースとなっている。スチールのフレームは75×75㎜のアングル材によって構成されており、大きな家具のようでもある。家具も同様に金物で製作されており、家全体が同様のディテールで構成されている。小さい家ではあるが、構造的な軽やかさ、家全体につながるリズム感によって、圧迫感のない空間に仕上がっている。