Hiroo Residence

2022

東京都心にありながら閑静な住宅街にある高級マンションのリノベーションプロジェクトである。有栖川宮公園を含め良好な近隣環境からファミリー層にも人気のあるエリアであり、特に南側のオープンスペースに面した日中のリビングスペースは日照時間も長く、明るい雰囲気を作りやすい環境にあった。都市生活者の自然への回帰の欲求に応じて伸びやかな光をリビングスペースの奥まで取り込み、やや白く染色したオーク材の床と壁、手仕事が残るような漆喰の壁を基調としたインテリアとした。

今回もまたカリモク家具との協働により、壁材、キッチンやキャビネット、また既存の状況よりも優れた温熱環境を手に入れるため内窓の製作、そしてより精度の高い空間を目指すために置き家具のデザインやアートに至るまで作ってもらうこととなった。気心の通じた製造チームとの共同作業は、彼らの職人的なクオリティ、家具においては空間における存在感や座り心地に至るまで感覚的な理解があり、空間を細部まで把握することができる。これはミニマルな空間ながらクオリティや快適性を伴った居心地を作る上では欠かせない設計の条件でもある。

ノームアーキテクツには椅子のデザインをお願いし、ペーパーコードで編まれたシェーカー家具からインスピレーションを受けた軽やかな椅子が生まれた。大きなダイニングスペースがより軽やかで快適な感覚が生まれたのはこの椅子の力によるものである。またエントランスとリビングのアートはノームアーキテクツから紹介を受けたアーティスト、Sara Martinsen氏とAtelier Plateauにお願いし、カリモクのコラボレーションによる木製のアートを配している。

これらは家具や建具といった木のデザインと呼応し、アートでありながら空間にハーモニーを作り出している。リビングの柔らかな光をリビングからダイニングスペースへと繋げるペンダント照明や、DYNAUDIOとのコラボレーションによる木製のスピーカーも我々がデザインしている。

小さなディテールから家具まで丁寧に作り込むことでしか生まれない空間は我々の目指すところではあるが、結果ノイズが少なくクラフトと手触りのある自然の素材に囲まれた空間には、静かで寛いだ雰囲気がありながらインスピレーションに溢れている。私たちが手がけるカリモクケーススタディの住空間における意図はここにあるのだが、情報に溢れた都市空間においてストレスを抱えつつも、好奇心に溢れた都市生活者において、一つのモデルになればと思っている。