Saga Hirakawaya Tofu Takeo Onsen

2022

佐嘉平川屋武雄温泉本店

佐嘉平川屋のフラグッシップは、佐賀県の老舗の温泉街である武雄温泉、楼門前に位置するショップ兼レストランである。

クライアントは既に2つのレストランを運営していたが、武雄温泉という生まれ育った地域で今回の敷地と出会い、以前のような賑わいがなくなり少しばかり寂しさを感じるようになってしまっていたこの地域の活性化に貢献できるのではないかという期待を持ち出店することになった。

建築としては、楼門や周辺環境と呼応するように、木造でかつ平家の建築物として見えるように計画し、柔らかく弧を描いた外観となっている。このカーブは楼門側においては、一体的な環境を作ると共に開放的で豊かなアプローチ空間を生み出し、内側には建築とランドスケープによって中庭を作っている。中庭には温泉の足湯を設け、ショップで買った商品を持ち、長く滞在してもらう仕掛けとなっている。

インテリアとしては、豆腐文化を発信していくショップと、ゆったりと料理を楽しめる居心地の良いレストランで構成されているが、2つの空間が柔らかくカーブさせたボリュームと、開放的な吹き抜けによってゆるやかにつなげている。

内部空間の光はダイナミックである。楼門を見るために開けた窓からの強い光は時間によって空間をドラマチックに変え、換気も兼ねた天窓からは、やわらなかな天井のラインや壁面に、美しい光のグラデーションを作り出す。また1階と2階、さらには2階の3つの部屋は同じディテールや素材を使いつつも、光のトーンを変えることで、空間の変化と共に食事を楽しめるように考えている。

また地域のブランドを積極的に取り入れており、家具は全て佐賀県諸富にある、弊社も家具のデザインを手掛けているAriakeによるものである。客席の特注のペンダントランプのシェードは佐賀市の名尾手すき和紙によって作られている。和紙を通した光は豆腐の鍋を柔らかく照らし、また反射した光はドーム状になった天井に光を送り込んでいる。

豆腐屋が自ら豆腐文化を発信し、地域の活性化も追求していく拠点というとても挑戦的なプロジェクトとなったわけだが、時を経てよりこの地域に馴染み、武雄温泉の新たなシンボルとなるような建築、そして環境となることを期待している。