Karimoku Commons Kyoto

2023

京都の東西をつなぐ姉小路通という歴史的景観が守られた通りに位置するカリモクコモンズ京都。1階と2階はKarimoku Case Studyのショールーム、3階はカリモクニュースタンダードを中心とした他のコレクションから厳選されたアイテムを展示するライブラリースペースである。そして、2年前にできたカリモクコモンズ東京からの2つ目の拠点である。

元々古い長屋を解体しての新築のコンクリート造であったが、建設途中にインテリアのみならず、外観の設計に参加することがで建築に合わせて窓周りなどを精度のあるファサードのデザインを敢行することができたことは幸いであった。

カリモクコモンズ京都のスペースとしてのインスピレーションの多くは、私の京都における体験である。およそ10年ほど前から年にかなりの日数を京都で過ごすようになり、いまだに発見のある京都に魅了されてきた。庭も、寺も、居酒屋もいいが、京都の街は歩いていて本当に楽しい街である。そうしたインスピレーションを受け、どこか京都にあっても違和感のない、しかしながら現代における住宅としての設えとしてのカリモクコモンズ京都を作ることができないかと考えた。

入り口は通り庇や格子といった京町家の特徴を感じさせる木製のルーバーで仕上げている。ルーバーのエッジにおいての家具的なディテールは、インテリアへ誘うきっかけとしてデザインしている。また2階、3階に入ったガラス越しに見える障子は近隣の住居へのプライバシーの配慮であるとともに、外観のバランスを作りまたインテリアに優しい光を届ける。また京都において暖簾は、まるで街をつなげていく美しいディテールだと思っているが、カリモクコモンズ京都でも採用し、ここがショールーム的なスペースであることを伝えると同時に、そこはかとなくインテリアをのぞかしている。暖簾越しの1階は町家の土間空間を意識して、コンクリート床の上に明るめのオーク材による家具を配している。一方、2階は京町家の住空間からのイメージを投影しダークトーンに染色されたオーク材の家具と床材としコントラストをつけた。

またスタイリング、香り、空間音楽なども空間に合わせ、また京都からのインスピレーションと京都エリアにゆかりのある人達とのコラボレーションとなっている。それぞれのプロフェッショナルによって五感を通じた包括的なアプローチがなされた空間も魅力となっている。決して大きなスペースではないが、まるで庭やお寺を楽しむように、家具やカリモクファンの方ばかりでなく、世界中のできるだけ多くの方々に体験してもらえたらと思っている。